2026.09.21 お知らせ

AI×財務わかりやすいシートが簡単に作れる!

「現金が数千万あるのに、安心できない医院」。決算を7枚で読むと見えてくるもの

通帳に現金はある。でも、それは本当に「自分のお金」でしょうか。架空のサンプル医院の決算を使い、PL・BS・キャッシュフロー・資金繰り予測など7枚の分析シートで医院のお金の流れを読み解く方法を、AIスキルとあわせてご紹介します。

※この記事に登場する「サンプル歯科医院」は、説明のために作成した架空の医院です。数値はすべてサンプルであり、実在の医院・クライアントのデータではありません。


「通帳には十分なお金がある。だから、うちは大丈夫」。

院長先生、そう思っていませんか?

売上が伸びている。通帳の残高も減っていない。赤字だと言われても、実感がない。歯科医院の経営では、こうした「なんとなく大丈夫」が、数年後に大きな差になって表れます。

この記事では、架空のサンプル医院の決算を題材に、7枚の分析シートでお金の流れを読み解いていきます。読み終えるころには、あなたの医院の決算書で「どこを見ればよいか」が分かるようになっているはずです。

1. PLだけ、通帳だけでは、医院の本当の姿は見えない

決算書を受け取ったとき、多くの院長先生が見るのは損益計算書(PL)の一番下、つまり「利益が出たかどうか」です。そして日々の安心材料にしているのは、通帳の残高でしょう。

ところが、この2つはどちらも医院の一面しか映していません。

借入金の返済は、経費になりません。お金は確実に出ていくのに、PLには表れないのです。逆に減価償却費は、経費になるのにお金は出ていきません。つまり、利益とお金の動きは、もともと別のものです(この仕組みは「売上はあるのになぜかお金がない…」黒字倒産を招く5つの意外な落とし穴で詳しく解説しています)。

そして通帳の残高は、「いくらあるか」は教えてくれても、「そのお金がどこから来たのか」は教えてくれません。

2. 試算表を渡すだけで、7枚の分析シートができる

PL、BS、キャッシュフロー、資金繰り。これらをセットで見る必要があると分かっていても、毎回手作業で作るのは現実的ではありません。

そこで活用しているのが、「cashflow」というAIスキルです。決算データや月次試算表の入ったExcelをAI(Claude)に渡すだけで、次の7枚のシートが出来上がります。

  1. 月次決算の変化(PL推移):売上を窓口・保険請求・自由診療・物販に分け、経費の内訳とともに推移を追う
  2. 年次決算の売上対比:各費用が売上の何%にあたるかを、目安の比率とコメント付きで示す
  3. BS(貸借対照表):資産と負債・純資産を左右に並べ、貸借が一致しているかまでチェック
  4. CF(キャッシュフロー計算書):営業・投資・財務の3区分で算出し、期末の現金残高をBSと照合
  5. 資金繰り予測:12ヶ月先までの現金残高を予測。資金が不足する月は赤く警告
  6. 中長期計画・財務分析:5年間の予測と、収益性・安全性・効率性の指標を目安つきで一覧に
  7. KPIダッシュボード:重要な数字をカード型でまとめ、「適正/要注意」を自動で判定

すべてのシートが数式でつながっているので、青字の前提条件を書き換えるだけで「スタッフを2名増やしたら」「売上が5%伸びたら」といった試算ができます。

3. 【サンプル】現金9,000万円の医院を、7枚で読んでみる

ここからは、架空の「サンプル歯科医院」の数字で、実際の読み解き方を見ていきます。繰り返しになりますが、以下はすべて説明用のサンプルデータです。

設定はこうです。自費率は約60%。開業時に、運転資金を多めに借り入れてスタートした医療法人です。

項目R6(2024)R7(2025)R8(2026)目標
売上高7,800万円9,600万円1億1,800万円
自費率58%60%60%
粗利率74%75%75%
営業利益−1,290万円−460万円+460万円

(サンプルデータ)

PLから分かること。 売上は1年で約23%伸び、営業赤字は1,290万円から460万円へと縮小しています。自費率が高い分、技工費率は13%とやや高めですが、粗利率は75%を確保。R8には黒字転換が見えています。PLだけを見れば、「赤字だが、順調に回復している医院」です。

BSの現金から分かること。 手元の現金預金は9,000万円。月商の約11倍です。一般的には月商の1〜3倍あれば余裕があると言われますから、かなり厚い水準です。赤字の時期でも資金繰りに追われず、採用や広告への投資を続けられたのは、この運転資金があったからです。ここだけを見れば、「お金に余裕のある医院」です。

では、この医院は安心なのでしょうか。

4. 【サンプル】そのお金は「稼いだお金」か、「借りたお金」か

BSの右側、つまり「お金の出どころ」に目を移すと、景色が変わります。

BSの主な項目(R7期末・サンプル)金額
現金預金9,000万円(月商の約11倍)
長期借入金約1億6,200万円(月商の約20倍)
繰越利益剰余金(累積赤字)−2,400万円
純資産合計−1,740万円

(サンプルデータ)

9,000万円の現金の裏側には、月商の約20倍にあたる借入金があります。借入金は月商の6倍以下がひとつの目安ですから、これは相当に重い水準です。手元のお金は、稼いで貯めたものではなく、借りて確保したものでした。

そしてキャッシュフロー計算書を見ると、その影響がはっきり表れます。

キャッシュフロー(R7・サンプル)金額
営業CF(本業で生んだお金)+740万円
投資CF(設備投資)−320万円
財務CF(借入金の返済)−1,200万円
現金の増減−780万円

(サンプルデータ)

営業赤字でも、減価償却費を足し戻すと本業では740万円のお金を生んでいます。ここは良い材料です。しかし、年間1,200万円の返済がそれを上回り、現金は1年で780万円減りました。資金繰り予測のシートでも、現金は毎月約43万円ずつ減っていく見通しです。

9,000万円あれば、すぐに困ることはありません。けれどこの医院は、「現金があるから安心」なのではなく、**「黒字化までの時間を、現金で買っている」**状態なのです。

5. 7枚を通して見ると、「次にやるべきこと」が1つに絞れる

PLだけなら「回復中の赤字の医院」。通帳だけなら「お金持ちの医院」。どちらも間違いではありませんが、どちらも一面でしかありません。

7枚を通して読むと、このサンプル医院が取り組むべきテーマは1つに絞られます。手元資金に余裕があるうちに、利益と減価償却費で返済を賄える体質へ移ることです。

中長期計画のシートで試算すると、R8の黒字化を境に、簡易フリーキャッシュフロー(利益+減価償却費−返済)がプラスに転じます。ここが、手元資金を「取り崩す」段階から「増やす」段階への転換点です。逆に言えば、R8の計画が1年遅れると、その分だけ現金が減り続けます。

だからこそ、R8計画で約28%増える人件費が、それを上回る粗利の増加につながっているか。自費率60%を支える新患を、広告費で獲得できているか。追いかけるべき数字も、自然と決まってきます。

最後に、あなたの医院について、3つだけ問いかけさせてください。

  • 通帳の現金は、月商の何ヶ月分ありますか?
  • そのお金は、稼いだお金ですか。借りたお金ですか?
  • 毎年の返済額を、利益と減価償却費で賄えていますか?

もしこの問いにすぐ答えられないなら、一度、決算を7枚に広げて見てみるタイミングかもしれません。

院長のための歯科マネジメントラボでは、この分析シートをもとに、院長先生と一緒に数字を読み解き、次の打ち手を考えています。

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※本記事の「サンプル歯科医院」は、解説のために作成した架空の医院です。掲載した数値はすべてサンプルデータであり、実在の医院・クライアントの数値ではありません。目安として示した比率は一般的な参考値で、医院の規模や診療方針によって適正水準は異なります。